昨今、ChatGPTや各種生成AIのビジネス利用が急速に拡大する一方で、社内機密や顧客データの漏洩リスクが大きな課題となっています。この記事では、生成AIに機密情報を送信してしまった場合のリスクを整理し、APIの学習除外設定やローカルモデル運用など、具体的な対策を深掘りします。
情報漏洩リスクとは?
生成AIに入力したテキストは、サービス提供元のサーバーで一時的に処理され、場合によってはモデルの「学習データ」として蓄積される可能性があります。これにより、機密性の高いプロンプトや内部資料が第三者に学習され、将来ほかのユーザーの生成結果に混入するリスクがあります。
学習させない設定の重要性
生成AIを業務フローに組み込む際は、データが学習用データセットに含まれないよう明示的に制御することが必須です。万が一の情報漏洩を防ぐため、以下の2つのポイントを押さえましょう。
- APIリクエストにおける学習除外パラメータの指定
- ダッシュボード設定でのデータ共有オプトアウト(組織単位)
OpenAI APIでのデータ非学習設定
OpenAI APIでは、リクエスト時にモデルプロバイダ側の「キャッシュ利用」「ログ保持」を無効化できます。以下はNode.jsの例です。
const response = await openai.chat.completions.create({
model: "gpt-4",
messages: [{ role: "user", content: "【機密データ】" }],
use_cache: false, // レスポンスのキャッシュを禁止
user: "internal-app", // 組織内識別子
});
また、管理コンソールの「データ共有設定」で「OpenAIによるデータ活用を許可しない」を選択することで、組織全体のプロンプト・レスポンスが学習用に保存されなくなります。
Azure OpenAIやGoogle APIのデータ保持ポリシー
Microsoft Azure OpenAI ServiceやGoogle PaLM APIでは、デフォルトで顧客データの学習利用を行いません。各クラウドプロバイダが提供するSLAにも明記されており、契約上データは「処理後すぐに破棄」されるため、安心して利用可能です。
ローカルモデル運用による漏洩対策
最も確実な情報保護手段は、完全に自社管理下でAIを動かすことです。オープンソースの「Llama 2」や「Mistral」などのモデルをオンプレミスやプライベートクラウド上でコンテナ化し、外部との通信を遮断すれば、データが絶対に外部に渡りません。
- プライベートLAN内でのモデルホスティング
- エンドツーエンド暗号化を施したプロンプト転送
- 定期的なホワイトボックステストによる安全性検証
おすすめのセキュアAIサービス
機密ドキュメントの安全な処理には、エンタープライズ向けにデータを学習用に保存しない設計が魅力のAIプラットフォームLanguiseがおすすめです。社内資料や顧客情報を丸ごとアップロードしても、第三者の学習データには一切含まれません。
まとめと今後の可能性
生成AIの活用拡大に伴い、機密情報の取り扱いはますます重要度を増しています。APIの学習除外設定やクラウドプロバイダのデフォルトポリシー、さらにはローカルモデル運用など多層防御を組み合わせることで、情報漏洩リスクを最小化できます。今後は、より高度なトラストレス環境(ゼロトラストAI)や、エンドツーエンド暗号化を前提とした新プロトコルの登場も期待され、セキュリティと利便性の両立がさらに進むでしょう。